遺言書は大切な財産や意思を後世に伝えるための重要な手段です。特に自筆証書遺言は、本人の手によるもので、手軽に作成できる点が魅力とされています。
しかし、近年では遺言書のデジタル化に向けた動きが進んでおり、これにより遺言書作成の方法が大きく変わる可能性があります。
この記事では、遺言書のデジタル化によるメリットとデメリットを詳しく解説し、今後の法的枠組みについて考察していきます。
遺言書のデジタル化に向けた前進
2024年には、遺言書のデジタル化に関する政府の方針が一定程度まとめられました。実現にはいたっていませんが、以下の政府方針に基づき、遺言の形が大きく変わる可能性があることがわかります。
・国民がデジタル技術を活用して、現行の自筆証書遺言と同程度の信頼性が確保される遺言を簡便に作成できるような新たな方式を設けること。
・デジタル完結を前提とした法務局における遺言を保管するための仕組み
・現行の自筆証書遺言における押印の必要性及び自書を要求する範囲
※令和6年法務省資料より抜粋
遺言書のデジタル化に向けた課題
遺言書のデジタル化に向けた法改正を進めるにあたって、以下の課題への対応が求められています。
本人確認:遺言書が本人の意思に基づいて作成されたことを確認する手段
遺言者の意思確認:遺言書作成時に遺言者が意識的に遺言内容を決定したことを証明する仕組み
遺言書形式の確認:デジタル形式が法律に準拠しているかを検証する
ビデオ遺言の導入可否:遺言者の口述を録画する方法が法的に認められるか
これらの課題をクリアできれば、遺言書のデジタル化は法的に効力を持つ正式な手段として利用されることになります。
公正証書遺言のデジタル化
令和5年公証人法改正により、公正証書遺言については令和7年(2025年)のうちにデジタル化することが決定しました。詳細について、 日本公証人連合会のサイトを参照してみましょう。
※日本公証人連合会「2025年10月1日から公正証書の作成手続がデジタル化されます!」
デジタル遺言のメリット
遺言書のデジタル化には、いくつかの重要なメリットがあります。以下ではその具体的な利点について説明します。
1. 作成が容易になる
自筆証書遺言は、法的に有効とするために特定の形式を守る必要があります。デジタル遺言の場合、インターネット上に用意された法的に準拠したテンプレートを使用することで、遺言書作成が格段に簡便になります。これにより、法律を守りつつ、誰でも簡単に遺言書を作成できるようになります。
2. 遺言書の保管場所に困らない
現在、自筆証書遺言は保管方法に問題を抱えています。自宅で保管する場合、遺族が遺言書を発見できるか不安が残り、法務局で保管する場合は手間がかかります。
デジタル化されると、遺言書はインターネット上の安全なサーバーに保管され、物理的に紛失するリスクが減ります。また、家族にデジタル遺言書の保管場所を伝えておけば、遺言書が見つからないという問題も回避できます。
3. 改ざんリスクの軽減
デジタル遺言には、強力な暗号化技術や電子署名の導入が期待されます。
これにより、第三者による不正な改ざんを防ぐことが可能になります。遺言書がデジタル化されると、手書きで作成したものに比べて、改ざんされるリスクが大きく減少するため、より安全に保管・管理できるようになります。
デジタル遺言のデメリット
デジタル遺言の導入には、いくつかの課題も存在します。これらのデメリットを理解した上で、利用を検討することが重要です。
1. パソコンやスマートフォンの使用が必須
デジタル遺言を作成・保管するには、パソコンやスマートフォンなどのデバイスを使いこなせることが前提となります。高齢者やデジタル技術に不安を感じている人々にとって、これが障壁となる場合があります。デジタル機器を使いこなせない人にとっては、遺言書作成が難しくなる可能性があります。
2. 遺言者の意思能力を判断する仕組みの整備が必要
自宅でデジタル遺言を作成する際、遺言者が本当に遺言内容を理解し、意識的に作成しているかを判断するための仕組みが求められます。
遺言書作成の際に、遺言者が精神的に十分な能力を持っていることを証明するためのプロセスが整備されないと、後々遺言の有効性が争われるリスクが生じるかもしれません。これに対して、どのように対処するかが重要な課題となります。
まとめ
遺言書のデジタル化は、作成の簡便さや保管方法の向上、改ざんリスクの軽減といった大きなメリットを提供する可能性があります。しかし、デジタル機器を使いこなせない人々に対する配慮や、遺言者の意思能力の確認方法など、解決すべき課題も多く存在します。
今後、遺言書のデジタル化が進むことが期待されていますが、その実現には時間がかかるかもしれません。
今後の法整備やシステム開発に注目し、遺言書のデジタル化がどのように進展するかを見守ることが重要です。デジタル遺言が実現すれば、遺言書作成の負担が大幅に軽減され、より多くの人々が円滑に遺言書を作成できるようになるでしょう。










