遺言は被相続人が生前に作成する法律行為ですが、その効力が実際に発生するのは遺言者の死亡後です。相続に直面した際、もし遺言書があるのに気づかず遺産分割協議を先に進めてしまうと、あとから見つかった遺言書の内容と食い違いが生じ、大きな混乱に陥るケースもあります。

 

ここでは、遺言の効力の発生タイミングや、遺言により相続される預貯金や不動産の名義変更の流れについて説明していきます

 

遺言の効力発生は被相続人の死亡時点

遺言書は作成した瞬間に「成立」し、将来の効力発生に備える形になります。ただし、実際に遺言書の効力が発生するのは遺言者が亡くなった時点ですから、生前の段階ではいかに書面が完成していても機能はしません

 

  • 期待権なし生前に遺贈の約束をした相手でも「仮登記」や「先行的な所有権の確保」はできない
  • 無効確認訴訟も不可能遺言自体が効力を持たないので、生前に「この遺言は無効だ」と訴えることは認められない

 

したがって、遺言の記載内容によって財産が移転するのはあくまでも遺言者死亡後となります。

 

遺言書があるかどうかを確認する方法

相続が始まったら、遺言書があるかどうかをまず確かめなければなりません。万が一、遺産分割協議を進めた後で遺言書が見つかると、先に行った分割協議が無効になる可能性が高いからです。

 

【遺言書が発見されなかった場合】:法定相続分または遺産分割協議による分配になる

【後から遺言書が見つかった場合】:書面の内容にしたがい分割し直す必要がある

 

遺言書の探し方・ヒント

  1. 自宅の仏壇やタンス、金庫
    • 遺言者が秘密にして作成していることもある
  2. 公証役場での確認
    • 公正証書遺言の場合、最寄りの公証役場で手続きを取れば有無を確認できる
  3. 秘密証書遺言:同じく公証役場で記録が残っている可能性がある

家族に言わず、メモ書きのような形で自筆証書遺言を残している人も珍しくありません。「遺言がない」と決めつけず、一通り家の中を捜索し、公証役場でも確認するのが安心です

 

遺言書による預貯金・有価証券の名義変更

遺言書にもとづいて、相続財産である預金や株式などの名義変更や払戻しをする場合、遺言執行者が指定されているかどうかによって手続き方法が変わります

  1. 遺言執行者がいる場合
    • 銀行や証券会社へ、遺言執行者が「受取人変更手続き」「払い戻し」などを行う
    • 相続人全員の印鑑証明書を揃えなくても済むケースが多い
  2. 遺言執行者がいない場合
    • 遺言書の原本や戸籍謄本などを提示しながら、金融機関ごとに手続き
    • 相続人全員の協力が必要となる事例が増える

 

金融機関が求める書類

  • 遺言書の原本と認証されたコピー(自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合は検認済証明書が必要)
  • 被相続人の死亡の記載がある戸籍・除籍謄本
    • 遺留分侵害の可能性があると判断すると、銀行によっては被相続人の出生から死亡までの戸籍や相続人全員の現戸籍を要求する場合も
  • 受遺者の印鑑証明書・実印(遺言執行者がいれば執行者のもの)

 

金融機関の対応は多少異なるため、事前に問い合わせるとよいでしょう。

 

遺言書による不動産の相続・遺贈登記

遺言で「○○に不動産を相続させる」と書かれている場合、登記原因は「相続」とされ、単独申請で登記できるのが一般的です。一方、相続人以外への遺贈(例えば友人へ土地を与えるなど)の場合は、登記原因が「遺贈」となり、登記義務者(相続人)と登記権利者(受遺者)の共同申請が必要になります。

  • 遺贈登記の場合:相続人が協力してくれないと登記が進まないリスクがある
  • 遺言執行者がいると、執行者が相続人に代わって登記手続きを行えるのでスムーズ

 

遺言執行者がいない場合の問題

相続人以外に遺贈されるケースで、かつ遺言執行者が指定されていないと、受遺者が相続人全員の印鑑や書類を集める必要があり、協力が得られないと登記が滞る事態が起こり得ます。このため、第三者への不動産遺贈を考えるなら、遺言執行者の指定が強く推奨されます

 

まとめ

遺言書をどのように作成し、誰に遺産を残すかは被相続人の自由ですが、相続開始後の手続きを見据えて遺言を構成しないと、受遺者や相続人が大きく困る可能性があります。財産の内容や相続人の状況に応じた適切な方法を選び、相続の専門家に相談しながら、円滑な相続を目指しましょう。

 

弊社では初回無料相談を実施しています。丁寧にご事情をうかがい、適切な助言をいたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

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