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遺言書を作成するときや実際に相続が始まったとき、「遺言者」「推定相続人」「受遺者」という用語が頻出します。また、遺言書を確実に実行するために「遺言執行者」が指定されることもあります。

 

ここでは、遺言者・相続人・受遺者および遺言執行者の権限や必要性について説明していきます

 

遺言者・推定相続人・受遺者とは

相続の中心人物は遺言者と相続人ですが、その他にも「推定相続人」「受遺者」という立場の人物が存在します。それぞれの意味と立場上の権利について整理してみましょう。

 

遺言者

遺言者とは、自分の死後に財産をどう分配するかを「遺言書」という形であらかじめ表明しておく人をいいます。

 

  • 遺言は民法で定める形式にしたがって作成する必要があり、15歳以上かつ意思能力(自分の行為の結果を理解できる判断力)が求められます
  • 遺言者本人が自筆で書く「自筆証書遺言」のほか、公証人が作成する「公正証書遺言」などいくつか方式がありますが、どの場合でも遺言者本人が最終的な意思表示を行うのが大原則です。
  • 遺言は代理作成できないため、「高齢の親の代わりに子が書いてあげる」ということは認められていません。

【ポイント】

遺言者は「推定相続人に全財産を譲る」「一部を第三者へ遺贈する」など、自分の望む遺産配分を示すことができます。ただし、遺留分(相続人が持つ最低限の取り分)を侵害するような遺産配分をした場合、相続開始後に揉め事に発展する可能性があることも理解しておきましょう

 

推定相続人

推定相続人は、遺言者が亡くなったときに法律上相続権を持つ可能性がある人を指します。

  • 配偶者や子、親など、民法の規定により相続人になると想定される人が推定相続人に当たります。
  • 相続開始前の段階では正式な「相続人」ではなく「推定相続人」と呼ぶのが正確です。

【ポイント】

遺言を書く段階では「推定相続人とされる人」を想定して作成しますので、「各人の相続分をどのくらいにするか」を考慮するときは、誰が推定相続人になるのか、という点をしっかりと把握する必要があります。

※推定相続人の方が先に亡くなったり相続放棄や廃除、欠格により相続権を失ったりする場合もあるため、推定相続人が確実に最終的な相続人になるとは限りません

 

受遺者

受遺者とは、遺言書を通じて推定相続人以外の第三者に財産を譲る場合、その譲り受け人を指します。

 

遺言者が「友人Xに自宅をあげる」「お世話になったNPO法人○○円を遺贈する」など相続人ではない人物や法人を指定した場合、その相手方が受遺者となります。

遺産の全部または一定割合(「全体の1/2」「総財産の○○分の1」など)を包括的に受け取る場合は「包括受遺者特定の財産(例えば「Aという不動産」や「預金口座Bの残高」など)を受け取る場合は「特定受遺者と呼ばれます。

【ポイント】

包括受遺者法律上「相続人に準ずる権利義務」を持つ点が特徴で、場合によっては相続人とほぼ同じような立場で遺産の管理や債務の処理に関与することもあります。

 

遺言執行者の役割と権限

遺言者の死亡をもって遺言どおりに相続手続きを進めることになりますが、誰が責任を持って遺言内容を実行するのでしょうか。推定相続人や受遺者が複数いる場合、それぞれの利害が対立するケースもあり、次のような状況に陥る可能性も否定できません。

 

  • 「私には不利な内容だから、勝手に遺言書を破棄・隠匿しよう」と考える人が出る
  • 遺言内容に納得せず、相続手続きがストップする

 

利害が絡むと人の思惑がぶつかり合う状況になりやすいため、中立的かつ事務的に遺言内容を実現してくれる人物がいると安心です。その役目を負っているのが遺言執行者なのです。

 

遺言執行者を指定するメリット

遺言執行者とは、遺言書の内容を実際に遂行する人で、以下のような業務を担います。

 

  • 遺言書の保管・管理
  • 相続発生後の財産調査・名義変更手続き
  • 不動産を第三者に遺贈する際の登記や引き渡し
  • 預金口座の解約や払戻し

 

遺言執行者の存在によって、「相続人が遺言書を勝手に隠す」「利害対立して遺産分割協議が進まない」といったリスクを大幅に減らすことができるでしょう。特に、複数の相続人がいて利害が衝突しそうな場合は、相続の専門家を遺言執行者に指定しておくと公平に手続きが進みやすいかもしれません

 

遺言執行者の資格・選任・業務内容

次に、遺言執行者となるための資格・選任方法に加え、先ほど述べた業務内容についてもまとめていきます。

 

遺言執行者の資格要件

 

  • 未成年者と破産者を除けば、基本的に誰でも遺言執行者になれます。
  • 相続人自身がなることも、第三者(弁護士や司法書士など専門家)がなることも可能です。
  • 公平性や手続きの難易度を考慮し、経験豊富な専門家を指定するのが望ましい場合も多いです。

 

遺言執行者の選任方法

遺言執行者は、一般的に遺言書により指定されるか、「遺言執行者を指定する権限がある人」に委託されます。そのような指定がなく、執行者不在の場合は、利害関係者(相続人など)が家庭裁判所に対して選任の申立てを行うことができます。また、遺言書で指定された執行者が就職を拒否したり途中で辞任したりした場合も、あらためて家庭裁判所に選任の申立てを行うことが可能です。

 

遺言執行者の業務

 

  1. 就任通知書を相続人に送付し、自分が執行者だと知らせる
  2. 財産目録の作成 相続人に交付
  3. 遺言内容の実施:不動産の所有権移転登記、預金解約払戻し、子の認知手続き、推定相続人の廃除の申立など

 

認知や推定相続人の廃除を遺言で行うときは、必ず遺言執行者が必要になります。なお、2020年の民法改正により、特定財産承継遺言の場合でも遺言執行者が手続きを行えるように拡充されました

 

受遺者や相続人に代わり遺言内容の実現を果たす重要人物

仮に自分が遺贈を受け取る側(受遺者)であっても、他の相続人が協力してくれなければ手続きはスムーズに進みません。遺言執行者は遺言の確実な執行を任されていますので、手続きなどが円滑に進みやすく遺言者の意図がより確実に実現されます。

 

遺言執行者の報酬と費用負担

遺言執行者に対する報酬は、遺言に記載しておくか家庭裁判所が決定した金額にしたがうか、いずれかのルートによって決まります。

 

  • 遺言書に「遺言執行者に〇〇円支払う」と明記しておけば、それに従う
  • 記載がない場合は、家庭裁判所が相続財産の状況等を考慮して決定
  • 一般的に、執行業務の労力や専門性に応じて報酬を設定する

 

費用は相続財産から捻出が原則

遺言執行に必要な費用(手続き費用など)は基本的に相続財産から支払われます。ただし、遺留分を侵害している場合にその費用を差し引くことはできないので注意が必要です。もし遺留分を減ずる形になってしまうなら、受遺者が負担するという扱いになります。

 

まとめ

遺言書を用意すれば、自分の死後に相続人同士が争うリスクを減らせますが、より安心して確実に実行させるには「遺言執行者」の指定が大きなカギとなります。特に、複数の相続人がいる場合や相続関係が複雑な場合は、執行者がいないとせっかくの遺言がスムーズに行われないことも考えられます。

 

当行政書士法人では、遺言書作成サポートや遺言執行者への就任・代行業務も受け付けており、円満な相続実現のためのアドバイスを提供しています。「自分が亡くなったあとの財産管理や手続きを確実に行ってほしい」とお考えの方は、ぜひお気軽に無料相談をご利用ください。

 

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