令和に入ってから、相続・遺言に関わる法律や関連制度が大きく見直されてきました。特に「自筆証書遺言の保管方法」や「作成手続きの緩和」など、これまでのルールと比較するとかなり利便性が高くなった印象があります。しかし、相続・遺言に関する新制度がいつ施行されどのように適用されるのか、すべてを把握することは困難かもしれません。

 

ここでは、令和元年から令和五年までに施行された主な改正点を時系列で整理し、それぞれが遺言や相続実務にどのような影響を与えるのか説明していきます

 

令和元年71日施行【預貯金仮払い制度・遺留分の変更など】

令和元年7月の法改正では、相続発生時の預金仮払いや遺留分関連事項など、相続実務に関する変更がありました。

 

預貯金の仮払い制度の導入

最高裁判所の判例で、預貯金は「遺産分割の対象」と定義されてきました。そのため、相続が開始しても法定相続分の割合だけで個々の相続人が払い戻しを受けることはできず、遺産分割協議が完了するまで資金を動かせないという事態が多発していたのです。

 

しかし、葬儀費用や急な支出があるのに預金をおろせないのは不合理であるとの声が強く、令和元年(2019年)7月の制度改正にいたったのです。

 

改正後のポイント

  • 一定の上限の範囲内で、相続人1人だけでも預金を仮払いできる
  • たとえば、相続人×一定額(150万円など)を上限に、個別の請求が可能

 

法改正により、緊急に葬儀費用や債務返済を行う必要がある場合、遺産分割協議を待たずに資金を確保できるようになりました

 

遺留分制度の改正

従来は、遺留分の請求手段として「遺留分減殺請求」があり、不動産を直接取り戻すようなケースがありました。しかし令和元年7月の改正で、名称と実務内容が変わり、金銭解決が基本となる「遺留分侵害額請求」となりました

 

  • 改正前:特定の不動産に対して減殺請求不動産が共有になり事後処理が面倒
  • 改正後:遺留分は金銭賠償が原則不動産の共有化を避け紛争を緩和

 

特別寄与制度の新設

相続人ではない親族(嫁いだ娘の夫、被相続人の兄弟姉妹など)が、被相続人の介護や看護を無償で行った場合でも、以前は一切遺産を受け取れませんでした。しかし、令和元年の改正によって特別寄与」が認められ、相続権がない人でも一定額の補償(特別寄与料)を相続人に請求できるようになったのです。

 

ただし、これはあくまで金銭請求権であり、「相続人になるわけではない」点に注意しましょう。

 

令和241日施行【配偶者居住権の創設】

被相続人と同居していた配偶者に、その家に住み続ける権利を保証する制度が新設されました。

 

  • 改正前:家に住みたければ不動産の所有権を相続するしかなく、結果的に他の財産を受け取れず生活費不足になる恐れがあった
  • 改正後:所有権を取得しなくても「居住権」という部分的な権利で済むため、不動産評価が低く見積もられ、配偶者は預金など他の財産を余分に取得しやすくなる

 

改正後のポイント

配偶者居住権は、別の相続人が家や土地の所有権を持っていても、配偶者が終身または一定期間無償で住めるよう法的保護を与えています。こうした仕組みにより、配偶者が家を失わずに、同時に現金・預金等も確保できる余地ができたわけです。

 

令和2710日施行【自筆証書遺言保管制度】

従来、自筆証書遺言は「自宅保管」あるいは「弁護士・司法書士に預ける」などの方法が一般的でしたが、紛失や偽造、相続人が発見できないリスクがつきまといました。令和2710からは、法務局が自筆証書遺言を有料で保管してくれる制度がスタートし、利便性が一気に高くなっています。

  • 検認が不要:家庭裁判所の検認手続きを省略できる
  • 手数料:1通あたり3,900円程度(令和5年時点)
  • 法務局での形式チェック:ただし内容の当否までは保証しない

 

公正証書遺言との比較

自筆証書遺言保管制度ができたことで、公正証書遺言より安価かつ公的保管が可能となりました。しかし、自筆証書遺言の場合、要件不備や意思能力の疑いなどについてはリスクが残ります。公正証書遺言は公証人が内容を確認するため形式ミスがほぼなく、証人2名も確保する必要があるため、争いリスクがさらに低いというメリットがあります。

 

令和7年101日施行【公正証書作成のデジタル化】

公証人法の改正にもとづき、令和7年10月1日から、公正証書に関する一連の手続をデジタル環境のもとで行うことが認められました。これにより、従来は公証役場での対面手続が原則であったものが、オンラインによる申請や作成へと広がっています

オンラインでの公正証書作成が可能に

従来の制度では、利用者と公証人が直接面談し、本人確認や内容確認を行うことが原則でした。

しかし改正後は、Web会議を通じて公証人と意思確認を行いデジタル形式の署名を行うことで、公正証書の作成が可能になったのです。

これにより、遠方に居住している方や、入院・介護などで外出が難しい方でも、公正証書を利用しやすくなりました。時間や場所に制約されない手続が実現した点は、大きな制度上のメリットといえます。

電子データによる公正証書の作成・保管

従来は紙の原本が作成され公証役場で保管される仕組みでしたが、改正後は電子データとして公正証書を作成・保存することが認められています。電子データは適切に管理され、必要に応じて電子的に正本や謄本の交付を受けることも可能です。

電子データの適切な管理により、公正証書の紛失や劣化といったリスクが軽減されるとともに、保管や管理の効率化が図られています。

電子署名と本人確認のデジタル化

これまで公正証書の作成には、実印の押印や対面による本人確認が必要とされていましたが、改正後は電子署名を用いた手続が認められています。また、本人確認についても電子証明書などを活用した方法が導入されました

これにより、申請から作成までの一連の流れを非対面で完結させることが可能となり、利便性が大きく向上しています。

令和以降の法改正を踏まえた遺言の作り方

令和以降、相続・遺言書に関するいくつもの法改正がありました。これを踏まえて、今後どのような形で遺言書を作成していくのが良いのか整理してみましょう。

 

「自筆証書遺言+保管制度利用」か「公正証書遺言」か

まずは、自筆証書遺言書と公正証書遺言のメリット・デメリットを簡単に比較してみます。

 

 自筆証書遺言

    • メリット:費用が安い、手軽
    • デメリット:形式不備リスク、偽造・紛失のリスク
    • 保管制度を使えば検認不要だが、内容の有効性までは保証されない
  • 公正証書遺言
    • メリット:公証人が立ち会い、形式ミスや意思能力の確認をしてくれる
    • デメリット:手数料が高め、証人2名が必要

 

どちらの方法を選択すればどのような利点や注意点があるのか、あらかじめよく理解したうえで、自分に合った方法を選択するといいかもしれません。

 

遺言書の内容も最新の法律に合わせる

法改正に伴い、遺留分や配偶者居住権などの制度が追加・変更されています。今後も制度のアップデートがあり得るため、適切に反映して作成しないと無効・争いの種になる可能性があります。必要に応じて定期的な見直しを行うことが肝心です

 

まとめ

遺言は、遺言者の意思によって相続人間の遺産分割争いを抑制することが可能な制度です。また、法定相続人がいない場合には公益的事業を行う団体に遺贈を行うことも考えられるなど、遺言制度の重要性はますます増していくと考えられます。

 

相続・遺言は家族・親族を巻き込んだ大きな出来事になるため、早めに令和時代の新ルールを理解し適切に制度を活用して、円満な財産承継を実現できるよう努めましょう。もし手続きや内容について不安があれば、遺言や相続に詳しい当行政書士法人がご相談を承りますので、まずは初回無料相談をぜひご利用ください。

 

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