遺言書は、遺言者の最終意思を明確に伝え、相続トラブルを未然に防ぐための極めて重要な文書です。特に、子どもに全財産を相続させると決めた場合は、遺留分などの法的制約を考慮しながら、正確かつ明確な文面で作成する必要があります。
ここでは、子どもに全財産を相続させるための遺言書の書き方と文例について説明していきます。
遺言書作成時は正確性や遺留分に配慮を
遺言書を通して子どもに全財産を相続させたい場合、他相続人の遺留分やその他の法的制約を踏まえ、慎重に内容を練る必要があります。
また、遺言書そのものの正確性や遺留分割合など、正しい数値を把握したうえで対策を講じておかなければいけません。
特に遺留分については、法律で認められた権利であるため、遺言者が何も対策せずにいれば、相続開始後に全財産を相続した子どもが他相続人から遺留分侵害額請求を受ける可能性も否定できません。
遺留分とは
遺留分とは、法定相続人に対して法律によって最低限保障される相続分のことであり、遺言書による指定によって極端に不公平な配分が行われた場合、遺留分侵害額請求が可能となる仕組みです。
たとえば、配偶者や子どもにはそれぞれ法定相続分が定められており、それを大きく下回る場合は、侵害として補填を求めることができます。このため、遺言書には自分の意思を最大限尊重しつつも、遺留分を侵害しないように配慮する必要があります。
遺留分侵害額請求を回避するための対策
子どもに全財産を相続させる場合、以下の点に注意することで、遺留分侵害額請求を回避できる可能性が高くなるでしょう。
遺留分に相当する財産の用意
遺言書に「全財産を〇〇に相続させる」と記載する場合、他の相続人がいるならば、遺留分として保証される最低限の金額または財産を別途遺産分割協議で決定するように明記する必要があります。
付言事項の活用
遺言書の付言事項に、全財産を子どもに相続させたい理由や、他の相続人への配慮についての故人の思いを記載することで、相続人間での不満や誤解を解くことも大切です。
遺言書の文面の見直し
定期的に遺言書の内容を確認し、財産状況や家族構成、法改正に応じて更新することで、常に最新の意向が反映されるようにしておきましょう。
遺言書の書き方
子どもに全財産を相続させるために遺言書を作成するのであれば、まずは遺言書としての形式を細部まで確認し正しく欠く必要があります。
書き方のポイント
遺言書は、遺言者の意思を正確に反映するために、以下の要素を必ず盛り込みます。
- 「誰に」:対象となる相続人の氏名、住所、生年月日などの識別情報
- 「何を」:相続させたい財産の具体的な内容。例として、不動産、預貯金、有価証券、動産など
- 「どのように」:相続割合や、特定の財産についてどの相続人が優先的に受け取るか。
- 「いつ」:作成日を明記し、遺言者の意思が最新のものであることを示す
- 「条件」:遺留分を考慮した取り決め、例えば「特定の相続人が遺留分を侵害しないようにする」といった条件
遺言書の形式
遺言書の種類として、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3つがありますが、なかでも多くの人に利用されている自筆証書遺言と公正証書遺言について作成ポイントを整理しておきましょう。
自筆証書遺言
自らの手で全文を書き、署名・捺印する必要があります。全文自書であることや日付・署名が明確であることが求められ、書き直しがある場合は訂正印の押印や追記をしなくてはなりません。
公正証書遺言
公証人と証人が立ち会い、公正証書として作成する形式です。公証人が内容をチェックするため、形式不備のリスクが低く信頼性が高い点が大きなメリットです。証人の選定や遺言執行者の指定など、決めるべき事柄がさまざまあるため、専門家に相談するなどして事前の準備をしっかり行いましょう。
子どもに全財産相続させたいときの遺言文例
以下は、子どもに全財産を相続させる場合のシンプルな遺言書の文例です。なお、実際の文面は各家庭の状況に合わせて調整が必要です。
子どもに全財産を相続させる遺言文例
遺言書
遺言者〇〇(遺言者の氏名)は、(1)全財産を長男〇〇(平成○○年○月○日生)に相続させることをここに遺言します。ただし、(2)本遺言書に記載されていないすべての財産については、相続人全員による遺産分割協議に基づき分割するものとし、(3)長男の相続分については、民法上の遺留分を侵害しない範囲内で調整することを希望します。
令和〇年〇月〇日
遺言者:〇〇 (署名・押印)
遺言文例(1)(2)(3)について
上記の文例では、子どもに全財産を相続させると同時に、以下の点に配慮しています。
【全財産を長男に相続させる旨の明記(1)】
シンプルに「全財産を長男に相続させる」と明記することで、故人の意志を明確に示しています。
【記載漏れに対する配慮(2)】
「本遺言書に記載されていないすべての財産」については、相続人全員での遺産分割協議によって分割することを明記し、記載漏れがあった場合のトラブルを回避します。
【遺留分の考慮(3)】
遺留分侵害のリスクを避けるため、民法上の遺留分を侵害しない範囲内で相続分を調整すること、また、遺留分侵害額請求の権利を明記して、相続人が不利益を被らないように工夫されています。
遺言書を作成する際の重要ポイント
遺言書を作成する際は、次の点に注意することがとても大切です。いずれも、法的に有効かつ遺言者の意思を正しく伝えるために欠かせない要素だといえます。
内容の明瞭性
遺言書は相続争いを未然に防ぐための文書であるため、曖昧な表現は避け、具体的な財産内容、金額、割合などを明確に記載するようにしましょう。
公正証書遺言の検討
形式上のミスを避け、第三者の介入で信頼性を高めるために、公正証書遺言として作成するのが望ましいです。公証人がチェックし、証人の立会いにより証明力が高くなります。
定期的な見直し
財産状況や家族構成、法律の改正などにより遺言の内容が陳腐化する可能性があるため、定期的に遺言書を見直し、必要に応じて新しい遺言書を作成することが推奨されます。
法律専門家への相談
遺言書作成は法律的にも複雑な手続きが伴うため、必ず行政書士、弁護士などの専門家に相談しながら進めることが重要です。適切な文言や形式の確認、不備がないかのチェックを行ってもらうと安心です。
まとめ
子どもに全財産を相続させる遺言書を作成するときは、遺族間のトラブルや不公平な相続を回避することも十分配慮しなければなりません。公正証書遺言として作成すれば、遺言書の信頼性と法的効力を高めるとともに、将来的なトラブルを回避することができます。さらに、定期的な見直しを行い、家族構成や財産状況の変化に応じて内容の更新を行うことも忘れないようにしましょう。
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