公正証書遺言は公証人が作成し公証役場に保管されるため、形式不備がなく証拠能力があり、安全性が高い遺言だといえます。しかし、「遺言内容に納得できない」「自分の取り分が極端に少ない」「不自然な内容だ」といった不満を持つ相続人も少なくありません。

 

この記事では、公正証書遺言に納得できないときの対応策や、無効を主張できるケース、遺留分を守るための請求方法などについて説明していきます

 

公正証書遺言とは

公正証書遺言は、公証人が作成に関与し、署名・押印まで行われるため、方式の不備がなく証拠能力が強い遺言形式です。このため、相続トラブル回避のために選ぶ人が多くいます。

 

しかし、そのような遺言書であっても、内容について納得できないと感じるケースもあるようです。

 

遺言者の意図を理解することが大事

「なぜこのように財産分配したのか」といったように、遺言書の気持ちを推し量ってみることも大切です。

 

生前贈与とのバランス調整

既に一方の子どもに高額な援助を行っていたため、他の子に多めに財産を遺したかもしれません。

 

特定の相続人への感謝や評価

長期の介護・看護、親の事業手伝いへの報酬的配慮を示したかったかもしれません。

 

トラブルや疎遠

故人との折り合いが悪かった相続人に対して、遺産配分の割合を小さくしたかもしれません。

 

事業承継目的

事業承継が目的の場合、後継者に会社株や不動産を集中させることがよくあります。

 

このように、遺言者なりの理由があることが少なくありません。まずは遺言者の想いを汲み取る努力をしてみると、納得につながるケースもあります。

 

しかし、このような背景を理解してもなお納得に至らない場合は、次のような対応策が必要になってくるでしょう。

 

公正証書遺言に納得できないときの5つの対応策

被相続人が遺した公正証書遺言に納得できない場合、次の5つの対応策を試してみるといいかもしれません。

 

【1】遺言無効確認の訴訟を検討する

遺言の作成時に被相続人の判断能力(遺言能力)がなかった、または詐欺や強迫があったと疑われる場合は、「遺言無効確認訴訟」を起こすことができます。

 

形式的に有効に見える公正証書遺言でも、こうした事情が証明されれば無効となる可能性があります。また、通常、訴訟は家庭裁判所で行われ、認知症の診断記録や介護記録があると証拠になります。

 

2】遺留分侵害額請求を行う

遺留分とは、法定相続人に認められる「最低限の取り分」を指します。通常、遺言書では故人が自由に財産を分配できますが、あまりにも特定の人に偏った遺産分配を行った場合、他の相続人の遺留分を侵害してしまう可能性があります。

 

遺留分侵害額請求ができるのは、被相続人の配偶者・子(代襲相続人含む)・直系尊属(親など)で、兄弟姉妹には遺留分はありません。たとえば配偶者がいる場合、配偶者と子が相続人になるケースでは、子には(原則)法定相続分の1/2が認められ、その1/2をさらに半分にした取り分が「遺留分」となります

 

遺留分侵害額請求の手続き

遺留分が侵害されていると感じた相続人は、遺留分侵害額請求を行い、自らの取り分を金銭で補填してもらうことができます。主な手順を確認しておきましょう。

 

遺留分を計算

遺産総額から法定相続分を考慮し、遺留分の金額を算定します。

 

請求する相手

遺贈を多く受けた相続人・受遺者に対して「遺留分を侵害している」と申し入れます。

 

請求期限

相続開始および侵害を知ったときから1年以内、または相続開始から10年以内に請求の手続きを行う必要があります。

 

3】他の相続人と遺産分割協議で十分に話し合う

法的に有効でも、相続人全員が合意すれば遺言と異なる分割も可能です。納得できない内容でも、他の相続人と協議によって柔軟に対応できることもあります。

 

【4】相続放棄や限定承認を検討する

内容次第では、相続するよりも放棄したほうが有利な場合もあります。とくに借金などが多く、プラス財産よりマイナスが大きい場合には、限定承認や相続放棄が有効な選択肢です。

 

5】専門家に相談する

対応の可否や手続の進め方はケースごとに異なります。少しでも「不公平では?」「法律的に争えないか?」と感じたら、相続専門の法律家に早期相談することが重要です。

 

なお、トラブルを起こさないような公正証書遺言を作成したい場合は、元気なうちに行政書士に相談するのがよく、相続開始後に公正証書遺言に関するトラブルが起きた場合は、弁護士に助言を求めることが最善策になります。

 

公正証書遺言が無効となる可能性がある主なケース

次のようなケースでは、遺言書自体が無効であると判断される可能性があります。

 

遺言者が認知症や精神障害で判断能力がなかった場合

遺言を有効にするには、作成時に遺言者が「遺言の意味を理解できる判断能力(遺言能力)」を持っている必要があります。

 

たとえば、生前の遺言者が重度の認知症を患っており、介護施設の職員の名前すら認識できない状態で遺言を作成した場合、意思能力が欠けていたとされ、遺言は無効と判断される可能性があります。

 

作成時に詐欺や強迫があった場合

遺言が本人の自由な意思に基づかず、だまされたり、脅されたりして書かれた場合には、遺言書は法的に無効とされます。

 

たとえば、相続人の一人が「遺言を書き換えなければ介護をやめる」などと脅して遺言書を書かせた場合、これは強迫による遺言とみなされ、無効とされる可能性があります。

 

遺言の内容が公序良俗に反する場合

遺言の内容が社会的正義や道徳に著しく反する場合は、法律にしたがい無効とされます。

 

たとえば、被相続人が生前に交際していた既婚者の愛人に全財産を相続させる遺言を残したようなケースでは、遺言の動機や経緯によっては公序良俗に反するとして一部または全部が無効になることがあります。

 

公正証書の内容が被相続人の意思と異なる場合

公証人が記載を誤ったり、第三者の働きかけで遺言者の意思が異なる内容になったりしていた場合、遺言は無効とされる可能性があります。

 

たとえば、高齢の被相続人が口頭で「長男と次男に半分ずつ」と伝えたにもかかわらず、公正証書遺言には「長男に全財産」と記載されていた場合、真意と異なる内容で作成された遺言であるとして争いの対象になることも考えられます。

 

まとめ

公正証書遺言は有効性が高いものの、内容に納得できない場合には相続人として正当な権利を主張する手段が用意されています。遺留分請求や無効訴訟の検討、他の相続人との協議など、自分に合った対処法を冷静に選びましょう。

 

当行政書士法人では、遺言書作成や修正のサポートなど幅広く対応していますので、お困りの場合はぜひ無料相談をご利用ください。

 

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