臓器提供を希望する人のなかには、遺言書に臓器提供の意思がある旨を記載しておけばいいのではないか?と考える方もいるかもしれません。しかし、臓器提供の意思表示は遺言書では不十分な場合があります。

 

ここでは、遺言による臓器提供の意思表示の可否や、一般に利用されている意思表示方法について説明していきます

 

臓器提供の意思表示は遺言書では不十分

遺言書は「被相続人が財産をどのように相続させたいか」という意思を表明する文書です。このため、遺言書の本文で「臓器提供したい」旨を記載することはできません。

 

遺言書の付言事項を利用することができる

通常、遺言書は「誰にどの財産を相続するか」を明確にするための文書として活用されています。しかし、遺言書には「付言事項」と呼ばれる法的効果を伴わない追加の文章を記載できますので、付言事項として臓器提供の希望を表明することは可能です。

 

ただし、遺言書の開封タイミングより遺体焼却のタイミングの方が早い場合が多く、付言事項の確認が遅れる可能性があることを理解しておきましょう。この点については後述します。

 

付言事項の記載例

付言事項は、遺言書の本文に加える「一言コメント」のような位置づけですが、家族に自分の思いを伝える強力な手段です。たとえば、以下のように書くことも考えられます。

【例文】

「私は、万が一、脳死状態または心停止となった場合において、移植医療を必要とする方々の助けになるよう、可能な範囲での臓器提供を希望しています。

家族にはすでにこの意志を伝えており、できる限り協力してもらいたいと願っております。」

ただし、付言事項には法的拘束力がありませんので、「遺言書に書いてあるから絶対に臓器提供が実行される」 わけではありません。医療現場では家族の同意や脳死判定など複数の手続きが必要です。

 

遺言書は死後に開封されるため間に合わない

遺言書の開封・確認は死亡後に家庭裁判所の検認などを経て行われるため、臓器提供の判断には間に合わないことがほとんどです。

 

臓器移植は、脳死または心停止から一定時間内に移植の準備が必要とされており、遺言の内容が確認されるタイミングでは既に提供できない状況になっている可能性があることを理解しておきましょう。

 

臓器提供の意思を有効に伝える3つの方法

臓器提供は、一般的に次の3つの方法で意思表示できるようになっています。それぞれの方法の特性を知り、複数の手段を併用することも検討しましょう。

 

1. 意思表示カードへの記入

日本臓器移植ネットワークが推奨する、最も確実な方法が臓器提供意思表示カードの記入と携帯です。

  • 健康保険証の裏面にも記載欄あり
  • 運転免許証にも表示可能(申請時に意思表示欄に記載)
  • 家族にも知らせておくことが重要

 

2. マイナンバーカードによる意思表示

マイナポータルや臓器移植ネットワークのサイトから、マイナンバーカードを使って臓器提供の意思を登録できます。

  • 登録内容は24時間体制で医療機関が確認可能
  • スマホ・PCからいつでも変更可能

 

3. 家族に直接伝えておく

臓器提供は家族の同意が必要です。意思表示カードがあっても、家族が反対すれば提供されないケースもあります。

  • 家族との事前の話し合いが極めて重要
  • 「遺言書ではなく生前の説明」が説得力を持ちます

 

死後に臓器提供を実現するために知っておくべきこと

  • 脳死後の臓器提供には、脳死判定の対象医療機関・医師が必要
  • 心停止後提供は角膜などに限られ、提供できる臓器が限られる
  • すべての臓器が提供可能なわけではない(感染症・がんなどで除外される場合も)

 

臓器提供の流れ

臓器提供が実際に行われる際、病院や移植コーディネーターを含む医療チームは、以下のステップを踏んで手続きを進めます。

 

脳死または心停止の確認

医師から家族に対して臓器提供の可能性について話が出ることがあります。

 

主治医による病状説明

    • 患者が重篤な状態に陥ったとき、医師が家族に病状や今後の見通しを説明
    • 脳死が強く疑われる場合、臓器提供の可能性についても話が出ることがある

 

検査・診断

    • 脳死判定基準に基づく複数回の検査を行い、「脳死状態」と公式に認められるかを判定

 

家族への意思確認

【医療チームの説明】

  • 日本臓器移植ネットワークのコーディネーターなどが、臓器提供に関する詳細を家族に説明
  • 患者の意思表示カードや免許証の記載などが見つかった場合、事前の希望が尊重されやすい

 

【家族の同意】

  • 本人が生前に意思表示していても、最終的には「家族の同意」が必要なケースが多い
  • 家族の理解と協力が得られないと、移植手術へ進めない

 

臓器移植手術の準備

【臓器移植ネットワークとの連携】

  • 提供可能な臓器と移植を必要とするレシピエント(受け手)のマッチング作業
  • 血液型や身体的条件などを考慮して受け手が決定

 

【ドナー管理と手術チーム準備】

  • 脳死状態のドナーを適切に管理しつつ、臓器提供チームが手術を行う
  • 手術後、ドナーの体は整形され、家族のもとへ返される

 

移植手術

【臓器の摘出】

  • 摘出場所は通常、ドナーが入院している病院
  • 臓器ごとに別々の移植チームが対応

 

【臓器の搬送と移植】

  • 摘出した臓器をヘリや救急車で迅速に移植先の病院へ運ぶ
  • 移植手術が行われ、レシピエントの受容性や医療チームの準備状況に応じて手術開始

 

まとめ

臓器提供の意思を伝えるには、遺言書に書くだけでは不十分です。意思表示カードやマイナンバー登録、家族との情報共有が不可欠となります。「誰かの役に立ちたい」というあなたの気持ちが確実に届くよう、生前からしっかりと準備することが大切です。

 

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