遺言書を作りたいと思っていても、実際にどのような手続きを踏めばいいのか分からない方は多いでしょう。自分ひとりで作成できる遺言形式として自筆証書遺言がありますが、「紙とペンさえあれば自分ひとりで作成可能」という手軽さがある反面、法律が定める厳格なルールを守らなければ無効になる恐れもあります。
ここでは、自筆証書遺言を作成するための下準備や書き方など作成のポイントについて説明していきます。
自筆証書遺言のメリットとリスク
自筆証書遺言は、紙とペンさえあればすぐに作成できる手軽さが大きな魅力です。誰にも内容を知られず、自宅で手続きが完結し、費用もほぼゼロに近いというメリットがあります。
法的ルールを守らなければ無効になるリスク
一方で、民法が定める厳格な形式を踏まえなかったり、財産や人物の特定が曖昧だったりすると、遺言書自体が無効となる恐れがあります。また、相続発生後には家庭裁判所で「検認」手続きが必要となる点も忘れてはいけません。
作成前に知っておきたい手続きの全体像
自筆証書遺言を自分で作成するためには、次の流れに沿って作業を進める必要があります。もし、財産や相続人が多い場合や税務面の配慮が必要な場合は、行政書士・弁護士・司法書士・税理士などに相談すると安心です。リスクを回避しながら完成度の高い遺言書を作成することができるでしょう。
【ステップ1】作成ルールの確認
自筆証書遺言の最重要ルールは、「全文・日付・氏名のすべてを自書し押印すること」です(民法968条)。この4つの要素が揃わない場合、遺言書は原則として無効になります。
財産目録を別紙で添付する場合の注意点
遺言書本文は自書である必要がありますが、財産目録はパソコン作成やコピーの添付でも問題ありません。ただし、各ページに署名押印が必要です。
書き損じや訂正の仕方
自筆証書遺言の訂正は、訂正箇所を示し「訂正または加筆した旨」を記載したうえで該当する箇所に署名押印して行います。このとき、訂正の行数や文字数を明記(「3字削除4字追加」など)するなど厳格な方法が求められる点に注意しましょう。なお、二重線や修正テープによる訂正は不可となっています。
【ステップ2】自分の財産状況を正確に把握
財産がそれほど多くない(自宅と預金口座1つだけなど)ときは、リストを作成しなくても問題ない場合があります。ただし、財産に不動産が含まれている場合は、登記情報の正確な記載が求められるので、法務局で「登記事項証明書」を取得し正確な情報を記載しましょう。
財産の種類が多い場合は目録を作る
被相続人が不動産を複数所有していたり、株式・投資信託・預金口座など多数の財産を持っていたりする場合は、遺言に詳しい専門家に「財産目録の作成」を依頼するといいでしょう。財産調査は想像以上に手間と労力を要しますので、専門家への依頼は非常に効率的であると考えられます。
評価額や登記内容のチェックも大切
- 不動産:固定資産評価証明書や名寄帳で評価額や所在を確認
- 預貯金:銀行名・支店名・預金種別・口座番号を特定
- 株式や投資信託:証券会社の残高証明取得など
【ステップ3】誰にどの財産をどれくらい分けるか決定
特定の相続人に多く財産を渡すと、他の相続人の遺留分を侵害する恐れがあります。遺留分トラブルを避けるには、被相続人の意思と相続人全員の納得が両立できるようバランスよく財産を配分することがとても大切です。
「人物特定」は氏名・生年月日・続柄などで明確に
遺言書で「誰に」財産を与えるか書く際、氏名だけでなく住所や生年月日、続柄などを併記すると手続きがスムーズです。記載が曖昧だと、相続手続きを進める金融機関や法務局で問題が起きる可能性があります。
「財産特定」には登記事項証明書や預金口座情報が重要
不動産は「○○市○番地○○の土地(地積○㎡)、登記簿○番」と詳細に記載します。預金口座は「○○銀行○○支店、普通預金、口座番号○○○」など具体的に特定しましょう。
【記載例】配分の仕方によって変わる遺言書の書き方
遺言書の内容は、財産をどのように配分するかによって大きく変わってきます。いくつかの具体例をみていきましょう。
すべての財産を包括的に一人へ相続させる場合
このように書くと、他の財産があってもすべて妻に渡ることになります。
複数の相続人に共有持分割合で分ける場合
特定財産を個別指定する場合
「私の○○銀行○○支店の普通預金口座(口座番号〇〇)を長女〇〇に相続させる。」
さらに、他の財産についても同様に記載するとわかりやすい遺言書になります。
【最後の仕上げ】日付記載・署名・押印により自筆証書遺言の完成
日付が「○月吉日」「令和○年○月頃」など曖昧だと無効です。正確な年月日を記入し、署名忘れや押印忘れがないよう十分に確認しましょう。
署名は戸籍上の漢字で
戸籍に登録されていない通称を使用した場合、本人確認の際に混乱する恐れがあります。署名する際は戸籍上の氏名を記載しましょう。押印は認印でも可とされていますが、実印を使う方が信用度は高いのが実情です。
まとめ
自分ひとりで完結できるため多くの人に人気がある自筆証書遺言ですが、形式不備で無効になる可能性はゼロではありません。特に、財産が多い方や相続人の間でトラブルが予想される場合は、専門家に相談してから作成すると安心です。
当行政書士法人では、自筆証書遺言の書き方をはじめ、不動産や預貯金の調査・評価や遺言の有効性のチェックなど幅広くサポートしています。気になる点があれば、ぜひお気軽に無料相談をご利用ください。










