「遺言書があるなら、そのとおりに財産を分けるのが当然」と思われがちですが、実は相続人が協議して「遺言書の内容を変更しよう」と全員合意するケースも存在します。果たして、遺言と遺産分割協議はどちらが優先されるのでしょうか?

 

また、遺言執行者が選任されている場合、遺産分割協議にどう影響するのでしょうか。

 

ここでは、遺言書がある場合の遺産分割協議の要不要や遺言執行者が及ぼす影響などについて説明していきます

 

遺言書があっても遺産分割協議が必要なケース

遺言書は、遺言者の生前に作成された「相続に対する明確な意思表示」です。法的にも、相続人全員による協議より遺言者が残した遺言の内容が優先されるのが大前提です。

 

たとえば、「長男に自宅、長女に預金1000万円を相続させる」などと具体的に指定されていれば、それにもとづいて各相続人が遺産を取得します。

 

相続人が遺言書の存在を認識しているかが重要

ただし、すべての相続人が遺言書の存在を知りながら、「やはり別の分け方がしたい」と合意した場合は、遺言内容を覆す形の協議が有効となる場合があります。

 

逆に、遺言書の存在を知らずに行った協議は無効化されやすいといえます(あとから発見された遺言が優先されるため)

 

遺言書があっても遺産分割協議が有効となるケース

一方で、次のような場合には遺産分割協議が必要になることがあります。

 

1. 遺言に記載されていない財産がある場合

遺言書に記載された財産に漏れがあり、全財産の行き先が明確にならない場合は、記載のない財産について相続人全員で協議する必要があります。

 

2. 相続人全員の合意で内容を変更したい場合

遺言の内容に納得できない場合でも、相続人全員が合意すれば、遺言と異なる分割をしても構いません(ただし相続人全員の署名・実印・印鑑証明が必要)。

 

3. 遺留分の請求がある場合

法定相続人が「遺留分」を侵害された場合には、遺言の内容に異議を唱えて金銭請求がなされる可能性があります。これにより、再協議が必要になることもあります。

 

遺言執行者とは?その役割と相続手続きへの影響

遺言執行者とは、遺言の内容を実行する法的な代理人のことです。被相続人の指名、または家庭裁判所の選任によって選ばれます。

 

遺言執行者の法的権限とは

遺言執行者は、単なる「手伝い役」ではありません。民法上の強い権限が付与されています。

 

遺言執行者の主な権限

  • 相続財産の管理・保存:執行中は財産の移動・使用に対する監督権限をもつ
  • 相続人の代理権:相続人の同意なしに登記や預金解約などの実行が可能
  • 登記や名義変更などに単独で対応可能
  • 受遺者への引渡義務:受遺者に財産を分配する責任を負う

 

相続人は勝手に財産を処分できない

遺言執行者が選任された財産については、相続人であっても勝手に手続きや処分はできません

 

遺言執行者の主な業務内容

遺言書の内容によって業務の範囲は異なりますが、一般的な業務は以下のとおりです。

 

1. 遺言書の内容確認と検認手続き(必要な場合)

自筆証書遺言の場合、家庭裁判所で「検認」が必要です。公正証書遺言は検認不要です。

 

2. 相続人・受遺者への通知と内容説明

遺言内容を関係者に周知し、誤解やトラブルを防ぐための情報共有を行います。

 

3. 不動産や預金などの名義変更手続き

不動産登記の名義変更(法務局への申請)や銀行預金の解約と分配、株式や投資信託の名義変更を行います。

 

4. 相続税の申告サポート(税理士と連携)

財産目録の作成を行ったり、税理士と協力のうえで相続税申告準備を整えたりします。

 

5. 特定財産の遺贈執行・寄付の手続き

「○○に100万円を遺贈する」「A団体に寄付する」といった遺言内容の実現に向けて行動します。

 

6. 遺留分の減殺請求対応(相続人からの異議申し立て)

相続人から「遺留分を侵害している」と主張された際の対応にあたります。

 

遺言執行者がいる場合は遺言書が優先されやすい

遺言執行者とは、遺言書に書かれた分配方法などを確実に実現する責務を負う人のことをいいます。遺言執行者が指定されている場合は、法律上、相続人が勝手に財産を処分したり執行を妨害したりする行為は認められません。

【民法第1013条:相続人は、遺言の執行を邪魔する行為をしてはならない】

つまり、遺言執行者の存在を知らずに遺産分割協議を行っても、最終的に遺言執行者が現れ協議の結果に反対すれば遺産分割協議は無効となるのです。

 

遺言執行者が同意した場合は?

一方、遺言執行者自身が「遺言書のとおりでなく、相続人全員の合意を尊重する」と認めたなら、遺産分割協議による別の分割案が実行される余地があります。ただし、遺言書で「遺産分割協議を禁止する」旨が明記されていれば、執行者でも協議を容認できないケースがあるので注意しましょう。

 

まとめ

遺言書の有無で相続手続きは大きく変わります。

 

たとえば、遺言書がある場合、原則として遺産分割協議は不要です。ただし、遺言に含まれない財産や相続人全員の合意がある場合は協議可能です。

 

また、遺言執行者は法的に遺言内容を着実に実行してくれる重要な存在ですので、円滑な相続を実現するために、必要に応じて遺言執行者や専門家の力を借りることも検討してみましょう。

 

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