遺言書における「付言事項」は、相続トラブルを防ぐための有力な手段です。遺言者の心情や財産分割の背景を伝えることで、相続人の理解を深め、誤解や争いを避けることができます。本記事では、付言事項の役割やその書き方について詳しく解説します。
法定遺言事項と付言事項の違い
遺言書には、法的効力を持つ「法定遺言事項」と、効力を持たない「付言事項」があります。
- 法定遺言事項: 財産分割方法、相続人の指定、未成年後見人の選任など、法的効力を持つ内容
- 付言事項: 遺言者の心情や背景事情など、法的効力は持たないが、相続人への理解を促すための補足的なメッセージ
例えば、遺言者が長年介護してくれた次男に多くの財産を相続させたい理由を付言事項に記載することで、相続人間のトラブルを防ぐ効果があります。
法定遺言事項とは?
遺言書に書くことができる内容のうち、法律によって定められた効力をもつ事項を「法定遺言事項」と呼びます。遺言書に書かれていれば法的拘束力が認められ、相続開始後に必ず尊重される項目です。
法定遺言事項の代表例
【遺産分割の方法・相続分の指定】
- 例:「○○土地を長男Aに相続させる」
- 例:「預金口座XX-XXXXを次女Bに遺贈する」
【遺贈(相続人以外への財産贈与)】
例:「愛用の絵画を友人Cに遺贈する」
【遺言執行者の指定】
例:「長男Aを遺言執行者とする」
【認知(非嫡出子の認知)】
例:「○○を私の子として認知する」
【未成年後見人・未成年後見監督人の指定】
例:「もし被後見人が未成年である場合は△△を後見人とする」
【推定相続人の廃除やその取消し】
例:「長男Aの相続権を廃除する」
法定遺言事項の特徴
- 法的拘束力が非常に強い
- 遺言書にこれらが書かれていると、家庭裁判所や相続人は、その内容を無視できない
- 書き方・形式を誤ると無効となるため、専門家に確認すると安心
付言事項とは?
付言事項は、遺言書のなかで遺言者の思いや心情・メッセージなどを伝えるための項目であり、法的な効力はありません。たとえば、「長年私の介護をしてくれた長女に感謝します」といった感謝の言葉や、「家業を継いでほしい」といった希望などが挙げられます。
付言事項の代表例
【家族への感謝や願い】
「妻には生前からの感謝を伝えたい」
「子どもたちがこれからも仲良く助け合ってほしい」
【相続の背景や理由の説明】
「長女が介護を担ってくれたので、多めに相続させる」
「先祖代々の土地を維持してほしいので長男に託す」
【葬儀・お墓に関する希望】
「葬儀は質素に行い、家族だけで送ってほしい」
「お墓は○○のお寺にお願いしたい」
付言事項の特徴
- 法的効力はない
- 相続人が法的に従う義務はないが、遺言者の気持ちを伝える大切な手段
- 遺族が遺言内容を理解し納得して協力してくれる可能性が高まる
法定遺言事項と付言事項の使い分け
法定遺言事項と付言事項は、具体的にどう使い分ければいいのでしょうか。
法的拘束力をもつ項目は「法定遺言事項」に
たとえば、遺産分割の方法や相続人の指定は、絶対に守ってほしい取り決めとして記載することが重要です。財産の承継に直接影響するため、法律で定められた形式(自筆証書、公正証書など)を守り、誤字脱字や記載ミスが無いよう注意しましょう。
想いを伝えるには「付言事項」を活用
一方、家族や相続人へ気持ちを伝えたり、特定の相続人に多めの財産を与える理由を明らかにしたりする場合は、付言事項を使うとスムーズです。強制力はありませんが、家族間のトラブルを減らし、遺言書への理解や協力を得やすくなります。
記載内容の具体例
法定遺言事項と付言事項の記載例をみていきましょう。
法定遺言事項の例
「私は所有する土地(所在:○○市△△町○番地)を長男Aに相続させる。
預金口座(○○銀行、口座番号XXXXXX)は長女Bに全額遺贈する。
遺言執行者として、長男Aを指定する。」
-
ここでは、不動産や預金口座の情報を詳しく明記するとともに、遺言執行者を指定しておくと後の手続きが円滑になります。
付言事項の例
「長年、妻には大変世話になった。ありがとう。子どもたちが今後も仲良く支え合って暮らしてほしいと願っている。
長女には私の介護を献身的にしてくれた感謝を込めて多めの財産を残したい。
葬儀は質素に行い、親しい親族だけで見送ってくれれば嬉しい。」
-
このように感謝の言葉や葬儀の希望、相続の背景理由を述べておくことで、遺言書に対する納得感を高められます。
まとめ
付言事項は、相続トラブルを避けるために有効な手段です。遺言書に付言事項を追加することで、相続人に遺言者の心情や事情を伝えることができ、円満な相続を実現するための助けになります。遺言書作成時には、専門家に相談し、付言事項を適切に活用することをおすすめします。










