遺言書を作成することで、遺言者の希望に沿った財産分配を行いやすくなる一方、「記載漏れの財産」が後から見つかったり「記載されていた財産がすでに売却」されていたりすることもあり得ます。こうした状況に陥ったとき、相続人同士でどのように手続きを行い、混乱を回避すればいいのでしょうか?

 

ここでは「遺言書に記載されていない財産が後から見つかった場合」と「遺言書に書かれていた財産がすでに存在しない場合」を中心に、具体的な対応策と遺言書作成時の注意点について解説します

 

遺言書に記載がない財産が見つかった場合

遺言書を作成していたとしても、その中にすべての財産が網羅されているとは限りません。むしろ、現金や株式などは時の経過とともに残高が変動しますし、遺言者が生前に別の口座を開設していたり投資信託に資金を移していたりすることもあります。

 

不記載の財産は動産だけではなく、不動産の共有持分や賃借状況が記載されていないなど、後から想定外の財産が見つかる可能性はゼロではありません。

 

【例】2つの銀行口座のうち1つに記載漏れがあった

遺言者は2つの口座を保有していたにもかかわらず、遺言書の中で以下のような記載がみられた場合どうしたらいいのでしょうか。

 

  • 口座A…遺言書で「口座Aの預金は長女に相続させる」と明記
  • 口座B…遺言書でまったく言及されていない

 

相続人が後になって口座Bが存在することに気付いた場合、口座Bは遺言書で指定されていない財産として法定相続分に基づいて分配されることになります。

 

遺言者はが口座Bについて「誰に渡すか」を遺言書に書いていないため、法律が定める相続順序や法定相続分にしたがって、相続人全員で遺産分割協議を行って分け合うのです

 

【例】遺産分割協議を行って分配内容を決めた

不動産など分割が難しい財産が後から見つかった場合は、基本的には相続人全員が参加して遺産分割協議を行う必要があります。たとえば以下のケースが該当します。

 

  1. 共同名義の不動産:遺言書に書いていなかった場合
  2. 投資信託や株式:名義や残高を把握していなかった場合
  3. 金銭債権(貸付金など):被相続人が誰かに金銭を貸していて、契約書が存在するも相続人が把握していなかった場合

 

「遺言書に明確な指定がない財産」は、法定相続人が協議を行い、分配内容を決定したうえで遺産分割協議書として書面化します。

 

遺言書に記載された財産が存在しなかった場合

遺言書の中で「財産○○を長男Aに相続させる」などと記載しているにもかかわらず、肝心の「財産○○」がすでに存在せず対応に困るケースもあります。

 

【例】すでに財産が処分されていた

遺言書に「○○土地を長男に相続させる」と書かれていたのにもかかわらず、その土地は生前に売却されていたというケースもあります。この場合、「存在しない財産を相続させる」という条項は履行不能となるため、遺言書の該当部分は実質的に無効とみなされます。

【例】

遺言書に記載:「土地Aを長男に相続させる」

実際:土地Aは生前に他者へ売却済み

結果:土地Aを相続することは不可能なため、遺言書の当該条項は無効

注意したいのは、遺言書全体が無効になるわけではなく「該当条項」が履行できないという点です。このような場合、該当する財産に相当する金銭や別の財産への振替が行われることもあります

 

【例】遺言者の意思どおりの分配ができない

遺言書に記載された財産が存在しなかった場合、遺言者の希望を実現できない可能性が生じます。

 

遺言書では「不動産を長男Aに相続させる」と記載されていても、その不動産がすでに売却されており、売却代金が口座に入っていた場合、売却代金は「遺言書に書いていない別の財産」という扱いになります。結果として、遺言書で指定がない財産として法定相続分や協議で分割されることになるのです。

 

これは遺言者が希望した遺産分割の形ではありませんが、遺言書の記載が不十分だったために起こり得ることだといえます。

 

【例】遺言書の変更・撤回が行われなかった

法律では、遺言者はいつでも遺言を撤回・変更できると定められています。

 

土地が売却されたときや預金口座の残高が変わったときなど、本来は遺言書も修正・追記されるべきでしょう。

 

しかし、遺言者がその変化に気づかなかったり遺言書修正の機会を逃したまま亡くなったりした場合、記載内容と現状の財産が食い違う状態となり、当該条項は履行不能(無効)となります。

 

遺言書の記載漏れや存在しない財産の記載を回避するために

遺言書は、遺言者が、どの相続人にどの財産をどのくらい継承させるかを意思表示した文書です。重要事項の記載漏れを確認したり、すでに存在していない財産に係る記述を修正したりするなど、何らかの対処が必要になってくるでしょう。

 

【対処1】財産目録の作成時に最新情報を反映する

遺言書作成時、「財産目録」を併せて作成することを推奨します。以下の点が重要です。

 

  • 預金口座の残高(メインバンクだけでなく、ネット銀行や証券口座、タンス預金など)
  • 不動産(土地・建物)の詳細(登記事項証明書を確認)
  • 有価証券(株式、投資信託、債券など)
  • 借金(債務)や連帯保証人の立場などマイナスの要素も含めて一覧化

 

目録を定期的に更新することで、記載漏れを減らすとともに、万が一漏れがあった場合も気づきやすくなります。

 

【対処2】記載外の財産は遺産分割協議で決定すると遺言書に明記する

遺言者が、今後の財産変動を想定しているなら、遺言書に下記のような条項を加えると便利です。

 

「この遺言書に記載のない財産については、相続人間の遺産分割協議により決定する」

 

この文言があると、記載漏れの財産が見つかっても、スムーズに相続人全員で協議を行い、法定相続分または合意に基づいて分割可能です。

 

【対処3】公正証書遺言を活用する

財産状況は常に変化するため、定期的に遺言書を見直しましょう。もし遺言内容の一部を変更したいときは、新たな遺言書を作成するか公正証書遺言で「○○条の削除・追加」という形を採ることがおすすめです。

 

公正証書遺言なら、公証人が内容をチェックしてくれるため、記載漏れや形式不備のリスクが低減されます。

 

 

まとめ

  • 遺言書に未記載の財産が後から発見された場合は、法定相続分または遺産分割協議により分配されます。
  • 遺言書に記載された財産が存在しない(すでに売却や消滅している)場合は、その条項は無効となり、別の方法で財産を分配する必要があります。
  • 予防策としては、財産目録の定期更新や「記載されていない財産は遺産分割協議で決定する」と明記しておくのがおすすめ。
  • 公正証書遺言を活用すると、記載漏れや無効リスクを低減でき、財産変動への対応も専門家のアドバイスを受けつつ進められるため安心です。

 

弊社では、遺言書の作成サポートや財産目録の作成支援を行っております。複雑な財産状況の整理や不動産の名義調査、生前贈与の有無確認を行い、「記載漏れのない遺言書」を目指します。また、将来的に財産が変動した際の書き換え相談も受け付けています。

 

遺言書や相続手続きについて不安がある方は、ぜひお早めに無料相談をご利用ください。十分な準備を整えておくことで、いざ相続のときに慌てずに済み、相続人全員が納得できる形で手続きを進めることができます。

 

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