人生の終盤において、自分の想いを法的にしっかり残すための遺言書は、とても重要な役割を果たします。しかしながら、その遺言書にいったいどの程度の効力があるのか、どういう内容が法的に守られて、どのような場合には無効になるのか――これらを正しく理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。
本記事では、遺言書の効力をテーマに、遺言書の法的効果がどこまで及ぶのか説明していきます。
遺言書が法的に有効となる範囲
遺言書が法的効力を持つ内容として、 「財産に関する事項」「身分に関する事項」「遺言執行に関する事項」の3つを挙げることができます。
1.財産に関する事項
遺言書の代表的な役割は「遺産の分配方法」を指定することです。
遺産分割方法の指定
- 「長男Aに自宅不動産を相続させる」「次男Bに預貯金をすべて相続させる」など
相続人以外への遺贈
- 親族以外の友人や慈善団体へ財産を与えることも可能
生命保険金の受取人変更
- 近年の保険法改正により、遺言書で保険金受取人を変更できるように
特別受益の持戻し免除
- 生前贈与を受けた人がいる場合、そのぶんを差し引かずに相続させる旨を遺言で明確化できる
これにより、法定相続分どおりではなく、被相続人が望む形で財産を分配できる仕組みが整っています。
2.身分に関する事項
意外と知られていないのが、遺言書で“身分”に関する変更ができるケースです。具体例は以下のとおりです。
非嫡出子の認知
- 婚姻関係にない男女の間に生まれた子を、公的に認知することが可能
未成年後見人の指定
- 被相続人が、未成年の子がいる場合に備えて後見人をあらかじめ決められる
推定相続人の廃除
- 相続人のうち、著しく不当な行為(暴力や虐待、重大な背信行為など)をした者に対して、相続権を剥奪できる(ただし、家庭裁判所の審判が必要)
身分に関わる事項は非常に重要です。通常は大きな家族トラブルに発展しやすい分野ですが、遺言書に明記しておけば、後々の相続手続きがスムーズになる可能性が高いです。
遺言書が無効になる可能性
遺言書の法的効力の範囲について理解したところで、遺言書が無効になるかもしれない可能性についてもみていきましょう。形式不備や遺言者の意思能力など、重要な要素が不足していると無効とされることもあるので注意が必要です。
形式不備があると無効
例えば自筆証書遺言の場合、全文を自筆し、署名・押印、日付を正しく記す必要があります。これらの要件を満たしていなければ遺言書は無効になります。
- 日付が「令和〇年〇月吉日」となっている→具体的日付でないため無効の恐れ
- 代理の人が代筆してしまった→本人の自筆でないため要注意
認知症などにより遺言者の意思能力に問題
遺言者が判断能力を欠いている状態で作成した遺言書も無効です。認知症の程度や作成当時の精神状態など、後になって相続人が争うことが珍しくありません。
家族全員が「遺言書に従わない」と合意
遺言書が形式的に有効であっても、相続人全員が「別の方法で遺産を分割したい」と同意した場合、実質的には遺言書の内容が無効となり、遺産分割協議で決めた結果が優先されます。
遺言書の効力が及ばない部分
遺言書に記載された事柄すべてについて法的効力を持つわけではなく、一部効力が及ばない部分もあります。
付言事項
遺言書には付言事項と呼ばれる、遺言者の思いや補足説明を自由に書ける欄があります。しかし、これは「法的拘束力を持たない」部分です。
付言事項の例
- 「○○へ多く相続させたのは介護を支えてくれたから」
- 「家族仲良く暮らして欲しい」
- 「自分の葬儀は質素にしたい」
いずれも、あくまで遺言者の気持ちを示すのみであり、法的な義務づけはできません。
遺言書に明記されていない生前の口約束
もし「私の死後、この財産を知人に譲る」といった口約束だけの場合、遺言書に明記されていない限り、基本的に法的効果はないとみなされます。
法的に確実にしたいなら、公正証書遺言に明記するか、死因贈与契約を文書で結ぶなどの手続きを考えましょう。
遺言書作成時のポイント
後から遺言書が無効と判断されてしまわないように、遺言者はあらかじめ次のような対策を講じておく必要があるでしょう。
公正証書遺言の作成
自筆証書遺言は費用がかからず手軽ですが、形式不備で無効になりやすいリスクがあります。公正証書遺言なら、公証人が内容を確認し作成するため、不備なく仕上がるメリットが大きいです。原本は公証役場で保管しますので、紛失や改ざんの恐れが少ない点は大きな利点でしょう。
相続人への事前説明
後々のトラブルを避けるためには、生前に相続人へ意図を伝えておくことが大切です。「なぜこの分配にしたのか」を先に話し合って理解を得れば、感情的な争いを回避しやすいでしょう。
専門家に相談
遺言書の文言ひとつで効力が変わったり、付言事項で誤解を招いたりする可能性があります。行政書士、司法書士などの専門家に相談すれば、形式的・内容的に安全な遺言書を作成できるでしょう。
まとめ
遺言書の効力は、財産分配から身分関係、遺言執行など、多岐にわたります。きちんと法律の形式を満たしていれば、原則として大きな力を持つ一方で、以下のようなポイントを理解することが必要です。
- (1)財産に関する事項:法定相続分以外の分配や受遺者の指定が可能
- (2)身分に関する事項:認知や後見人の指定、推定相続人の廃除など
- (3)遺言執行:遺言執行者を指定することで、遺言内容がスムーズに実現
- 効力を持たない付言事項:遺言者の思いを伝えるためには有用だが、法律的強制はない
- 全相続人の合意で変更可能:遺言書があっても、相続人全員が別の方法を希望すればそちらが優先
- 遺留分への配慮:遺言内容が一方的に偏っているときは、遺留分侵害額請求が起こりうる
正しく作成された遺言書は、被相続人の希望を最大限反映しつつ、相続人同士の争いを減らす非常に重要なツールです。しかしながら、形式や記載内容が不十分・不明確だと、無効リスクやトラブルの原因になりかねません。
当行政書士法人では、遺言書案の作成から相続手続きのサポートまで、幅広い支援が可能です。
- 遺言書の起案・公正証書遺言の相談
- 各種相続手続きの代行・サポート
- 相続税対策を含む総合アドバイス など
まずは無料相談にて、「どういった分配を望み、どのように遺言書を作ればいいのか」 一緒に考えてみませんか?家族や大切な人たちを不必要な争いから守るため、遺言書を正しく活用しましょう。










