遺言書を遺さなかった場合、遺族遺産分割協議や法定相続割合に基づいて話し合いを進めることになります。しかし、遺言書がなく遺産分割の方針が定まらなかった場合は、相続人同士の意見衝突に発展することもあるのです。
ここでは、遺言書がない場合に相続手続きをどのように進めるか、必要な手続きの流れや選択肢について説明していきます。
遺言書がない場合の相続方法
遺言書の存在は、被相続人(亡くなられた方)の意志を明確化し、スムーズな手続きを可能にしてくれます。しかし、遺言書がない状況下では次の2つの方法で相続を進めるのが基本です。
- 相続人全員による話し合い(遺産分割協議)
- 法定相続分に基づく相続
相続人全員による遺産分割協議
遺言書がない場合、すべての相続人が集まり財産をどう分けるか話し合うのが基本的なやり方です。これを遺産分割協議と呼び、協議がまとまれば書面化した 「遺産分割協議書」 を作成します。
【遺産分割協議書作成の注意点】
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- 各相続人の署名押印が必要
- 記載内容に不備があると名義変更できないリスクも
- 印鑑証明書を添付することで信頼性アップ
遺産分割協議は、被相続人の死亡後すぐに進めてもいいのですが、戸籍謄本の収集や財産の調査などが先に必要となります。
法定相続分に基づく相続
協議がスムーズに進まないため、あえて法定相続分で分けるという場合もあります。民法に定められた 法定相続分は以下のとおりです。(代表的な例)
相続人が配偶者と子ども(1人)だった場合
- 配偶者:2分の1
- 子 :2分の1
相続人が配偶者と子ども(2人)だった場合
- 配偶者:2分の1
- 子 :各4分の1ずつ
相続人が配偶者と直系尊属(親)だった場合
- 配偶者:3分の2
- 親 :3分の1
ただし、 法定相続分で分割する といっても、不動産や株式など分け方が複雑な財産がある場合は容易ではありません。最終的には相続人間で協議する必要が出てくることも多いです。
遺言書がない場合の相続手続きの流れ
遺言書が見当たらない、あるいは遺言書がないと確定した場合に進める一連の手続きは、概ね下記のステップを踏みます。
1.相続の開始
相続は、被相続人の死亡をもって開始します。この時点で、故人名義の口座は凍結され、 何も手続きしないとお金が引き出せなくなる 点に注意が必要です。
2.遺言書の有無・内容を確認
まずは公正証書遺言の有無を公証役場で確認し、自筆証書遺言があるかどうか家中を探したり、法務局で保管されていないか を確認します。見つからなければ、 「遺言書がない」 と判断し、以下の流れへ進みます。
3.相続人の特定(戸籍謄本収集)
誰が相続人なのかを確定するため、被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍)を遡って取得します。 相続人に漏れがあると手続きが無効になる リスクもあるため、慎重に行いましょう。
4.相続財産の調査と目録の作成
次に、預貯金や不動産、株式、負債まで含めた相続財産を網羅的に把握します。財産状況を一覧化した 「財産目録」 を作成し、相続人全員が把握できるようにしましょう。
5.相続方法の選択
財産の全体像を掴んだら、以下の中から適切な相続方法を選びます。
単純承認
- 財産も負債もそのまま引き継ぐ方法
- 期限内に他の手続きをしない場合、自動的にこの方法に
限定承認
- プラスの財産範囲で負債を返済し、残れば相続する
- 相続開始から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申立てが必要
相続放棄
- 一切の財産・負債を相続しない
- こちらも3ヶ月以内に申立てる必要がある
6.遺産分割協議の実施
相続人が複数いる場合、どの財産を誰が相続するかを話し合います。協議がまとまったら 「遺産分割協議書」 を作成し、全員が署名押印(実印)し、各自印鑑証明書を添付するのが通例です。
7.名義変更手続き
遺産分割協議書を添付して、不動産の名義変更(相続登記) や 銀行口座の解約・名義変更 を行います。それぞれの機関が定める必要書類を準備し、期限内に手続きを完了させましょう。
8.所得税の準確定申告・相続税申告
被相続人が事業所得や不動産所得などを得ていた場合、死亡の日から4ヶ月以内に準確定申告をする必要があります。また、相続税の申告・納付は原則10ヶ月以内に行うため、財産評価に時間がかかることも考慮しつつ早めに動き出しましょう。
遺言書がない場合の相続はどうなるか
遺言書がない場合、遺言者による遺産配分の目安がわかりませんので、基本的には遺産分割協議か法定相続分をもとにして各相続人の相続分を決定していくことになるでしょう。
相続人間の話し合いが重要
遺言がないと、相続人全員の話し合いで遺産を分配することになりますが、円満に進まないケースも少なくありません。各自の意見が食い違って協議が長期化したり、被相続人の凍結口座を解除できず相続人が資金不足に陥る可能性が生じることもあります。
【対策】
- できるだけ早期に財産目録を用意し、透明性を確保する
- 必要に応じて専門家(行政書士や弁護士)を間に入れ、協議を円滑に進める
法定相続分通りにしない場合
法定相続分はあくまで目安です。協議の結果、 「不動産は長男が全て相続し、預貯金は次男が多めに取得する」 なども自由に決められます。ただし、相続人全員が合意 しないといけません。
相続人の1人が行方不明のとき
相続人が消息不明で連絡が取れない場合、協議が成立しません。その場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てたり、失踪宣告を受ける などの手続きが必要となります。通常より時間や手間がかかる点に注意しましょう。
専門家のサポートを活用するメリット
相続に係る手続きを行う場合、関連法を確認したり法律用語を理解したりする必要があります。また、相続手続は想像以上に煩雑な場合もあるため、専門家のサポートを利用する人も多くいます。専門家の協力を得るメリットは次のとおりです。
煩雑な手続きを一括で進められる
戸籍謄本の収集や財産調査、遺産分割協議書の作成、相続登記、相続税申告など、相続手続きは多岐にわたります。専門家(行政書士・税理士・弁護士・司法書士など)を利用すると、書類不足やミス を防ぎながらスムーズに進められます。
相続トラブルを回避しやすい
専門家が入ることで、相続人同士での感情的対立を抑え、公平な立場でアドバイスを得ることができます。
遺言書の必要性を再確認
遺言書があれば、誰がどの財産を相続するかを明確に示せるため、相続人の争いを大幅に軽減可能です。特に下記のような状況の方は、早めに遺言書の作成を検討するといいでしょう。
- 相続人が多数いる場合
- 相続人同士の仲が悪い、不公平な財産分配が想定される
- 自分の希望通りに特定の人へ財産を多く残したい
- 事業承継など特殊な相続ニーズがある
まとめ
遺言書がない場合の相続手続きは、相続人全員による遺産分割協議または法定相続分での分割を軸に進められます。しかし、遺言書がないが故に、下記の問題が起こりやすくなります。
- 相続人同士の協議が長引き、口座凍結期間が延びる
- 相続人間で意見が対立し、法的トラブルに発展
- 相続放棄や限定承認の判断が遅れれば、負債まで背負うリスク
- 書類ミスや行方不明の相続人がいると、協議書作成が難航
遺言書があれば、こうした問題をスムーズに解消できる可能性が高いです。一方、 「遺言書がすでにない」 状況では、次善策として相続人全員が協力し、早めに財産調査と協議を行う必要があります。
弊社では、遺言書がない状態で相続が開始した場合でも、弊社行政書士を始め税理士や司法書士などと連携し、相続人調査・財産目録の作成・遺産分割協議書の作成 などをトータルでサポートしています。初回無料相談も行っていますので、手続きに不安がある方はお気軽にお問い合わせください。










