配偶者も子どももいない独身者やおひとりさまの方の中には、自分の財産は死後どうなるのか、身寄りがない場合は葬儀や遺品整理は誰がやってくれるのか、といった不安を抱える方が少なくありません。
だからこそ、積極的に遺言書の作成を検討し、安心して老後の生活を送ることが大切だといえます。
ここでは、おひとりさまが遺言書を書くべき理由や遺言書の書き方、記載事項や遺贈などについて説明していきます。
おひとりさまが遺言書を書くべき3つの理由
いわゆる「おひとりさま」とよばれる独身者が遺言書を作成しておくべき理由は大きく3つ考えられます。
1. 相続人がいないと財産は国庫に帰属するから
直系の親族(子・孫・父母)や兄弟姉妹がいない場合、相続人がいないと判断され、あなたの大切な財産は国に納められてしまうことになります。
「友人に遺したい」「お世話になった施設や団体に寄付したい」といった希望があっても、遺言がなければ実現しません。
2. 誰が葬儀・納骨・遺品整理をしてくれるのかが曖昧になるから
遺言には、葬儀の方法・納骨先・死後事務の希望なども記載することができます。誰が何をするかをあらかじめ指名しておけば、死亡後の混乱や放置状態を防げます。
3. トラブル・手続きの遅延・費用の増大を防げるから
遺言書がないと、遠縁の親戚が相続権を主張して争いになることや、遺品が長期間放置されて管理費用がかさむこともあります。
遺言があれば、信頼できる人にスムーズに託すことができ、トラブルやコストの発生を最小限に抑えられます。
遺言書に記載しておくべき内容
おひとりさまの場合、遺言書に次のような内容を盛り込むと、後のトラブルや不安を回避できるでしょう。
- 財産の承継先(友人・福祉団体・自治体など)
- 遺言執行者の指定(手続きを代行してくれる人や専門家)
- 葬儀・納骨方法の希望
- ペットの引き取り先や飼育費の用意(ペット信託)
- 死後事務(契約の解約、SNS削除、医療費精算など)
自筆証書遺言と公正証書遺言
自分で作成可能な自筆証書遺言と保管状況が良く無効になりにくい公正証書遺言について、それぞれの特徴を整理しておきましょう。
自筆証書遺言
自分で遺言書を作成できる点は自筆証書遺言の大きなメリットの1つですが、保管リスクや無効リスクがあることも覚えておきましょう。(※ただし、自筆証書遺言保管制度を利用すれば、法務局で保管でき検認が不要になるため安心です。)
- 【メリット】費用がかからない/自宅で作成できる
- 【デメリット】形式不備で無効リスクあり/発見されない可能性
公正証書遺言
おひとりさまには公正証書遺言がおすすめです。内容に不備が出にくく、万一のときも確実に遺言書を見つけてもらえるからです。
- 【メリット】公証人が作成・保管/無効になりにくい
- 【デメリット】証人2人が必要/費用(2~7万円程度)がかかる
特定の団体や人物に遺贈するには「遺言書」が必須
相続人がいないとはいえ、せっかく築き上げた自分の財産を自分の納得のいくように処分したいと考えるのであれば、遺言書を作成することが大切です。
「遺贈」とは
自分の死後、法定相続人以外の第三者(人物や団体など)に財産を譲ることを「遺贈」といいます。遺贈には次の2種類があります。
- 包括遺贈:全財産や財産の一定割合をまとめて譲る(例:「総財産の1/2を○○に与える」)
- 特定遺贈:特定の財産(預金口座、土地など)を指定して譲る(例:「○○銀行の預金残高を△△に与える」)
いずれも、受遺者が相続税の納税義務を負う場合があります。
遺言書で遺贈先を明記する
もし独身者が自分の財産を特定の個人や任意団体に譲りたいのであれば、遺言書を作成し相手の名前と遺贈する財産を明確に指定する必要があります。そうしなければ、「相続人がおらず遺言書もない」という状況になってしまい、自分の意向とは関係なく国庫に帰属してしまうことも考えられます。
独身者・おひとりさまの遺言書の書き方例
包括遺贈を行う場合と特定遺贈を行う場合に分けて、独身者・おひとりさまの遺言書作成例をみていきましょう。
任意の団体へ包括遺贈する場合の遺言書例
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遺言書 1.遺言者は、遺言者が所有するすべての財産(プラスの財産・マイナスの財産を含む)を包括して、以下の団体に遺贈する。 一般財団法人○○(所在地:東京都千代田区○○町○丁目○番地) 2.遺言執行者は、遺言者の財産を換価(売却など)したうえで、遺言者の債務・遺言執行に係る費用・報酬を控除し、その残余を前記団体に寄付する。 3.遺言執行者として、△△△(氏名)を指定する。 4.遺言執行者の報酬は、遺言者の相続税評価額の○%とする。 令和○年○月○日 住所:東京都新宿区○○○ 遺言者:新宿 太郎 印 |
上記は包括遺贈の一例です。プラスの財産もマイナスの財産もまとめて相手に渡す形式であるため、相手方にとってはわかりやすい一方、債務なども負うことになります。任意団体を指定する場合、受け入れに条件を設けている場合もあるため、事前に意向を伝えておくと安心です。
特定の人物へ特定遺贈する場合の遺言書例
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遺言書 1.遺言者は、○○銀行にある遺言者名義の預金口座の残高すべてを、次の人物に遺贈する。 東京 次郎(東京都新宿区○町○丁目○番地、昭和○年○月○日生) 2.遺言執行者として、△△△(氏名)を指定する。 付言事項: 東京次郎さんへ。日頃から私を家族のように世話してくれて、心から感謝しています。この預金は感謝の証として受け取ってください。 令和○年○月○日 住所:東京都新宿区○○ 遺言者:新宿 太郎 印 |
特定遺贈では、「何を」「誰に」譲るかを明確に指定します。残したいメッセージや想いは「付言事項」に書くとよいでしょう(付言事項そのものは法的拘束力をもちませんが、受遺者に思いを伝える役割を果たします)。
遺言書を作成する際の注意点
遺言書を作成するときは、遺留分や形式不備などに十分注意しましょう。また、相続人がいないことから、確実に遺言内容を実現するために遺言執行者の指定も忘れず行います。
遺留分に注意
- 法定相続人がいれば、配偶者・子・親には遺留分があるので、その人の取り分を完全に排除するのは難しい
- ただし「兄弟姉妹」には遺留分がないため、全財産を第三者へ寄付してもよい(相続人がいないなら問題なし)
遺言執行者の指定を忘れずに
- 自筆証書や公正証書であっても、死後誰が遺言を実行するのか決めておくとスムーズ
- 不動産売却や預金引き出しなどの手続きをする際に、利害関係がない第三者の専門家が遺言執行者になっていると公平
形式不備を避ける
- 自筆証書なら「全文手書き・日付・署名・押印」が必須
- 公正証書なら公証人の関与により形式ミスがほぼなくなるが、費用がかかる
特定の団体に寄付する際は事前相談
- 受け取りを拒否される可能性もある(債務や管理コストを抱える恐れがあるため)
まとめ
「自分の死後どうなるのか」が不安なおひとりさまは多いですが、遺言書と適切な準備をすれば安心して人生を締めくくることができます。
当行政書士法人では、相続・遺言分野に精通した専門家が、生前の計画から死後の実務サポートまで幅広く対応いたします。自分がいなくなった後の財産活用にお悩みであれば、ぜひお気軽に無料相談をご利用いただき、安心の生前対策を一緒に考えてみましょう。










