「数年前の夫の相続手続きでは大変な思いをした」

「しかも今回は自分の病状が重篤で、手術後の容態急変も考えられる」

 

このような深刻な状況において、急きょ遺言作成を思い立ったご依頼者様。娘様に自分の意思を告げたうえで、遺言書作成の手続きを行いました。

 

ここでは、ご依頼者様の背景事情から遺言書形式の選定、弊社へのご依頼から実際の相続手続きまでの流れについて説明していきます

 

遺言書作成のご相談背景

今回のご相談は来週手術を受ける女性の娘様からでした。

 

ずっと元気だったお母様に脳腫瘍が見つかり体調が急変したとの事です。手術は来週に迫り、しかも術後意識が戻るかどうか分からないということから、やや慌てた様子で弊社にお電話を頂きました

 

お母様は数年前にご主人を亡くされており相続手続が大変だったことを思い出され、至急娘様に「遺言の専門家に相談するよう」伝えたのが、今回弊社にご連絡を頂いた経緯だったようです。

 

お母様はご自宅と賃貸されている不動産をお持ちでした。また、預貯金を含め娘様に全て遺してあげたいと考えていたようです。相続人は娘様以外にもおられましたが、お母様は娘様が苦労しないよう必死な思いで行動されていたのです。

 

容態は日に日に悪化しているとの事でしたので、弊社行政書士はすぐに時間を作りお母様に会いに行きました。

 

「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」か

どちらの遺言書が良いか尋ねられた場合、弊社では「公正証書遺言」をお勧めしています。かなりの高確率で、相続手続を遺言者様の意に沿って実行する事ができることがその理由です。公正証書は公証役場の公証人が作成し、原本は公証役場で保管される事になり、相続人であれば誰でも公証役場に対して遺言書の開示を請求可能です。

 

一方、自筆証書遺言はご自身で作成されてご自身で保管される事となるため、万が一遺言者が亡くなったとしても「発見されない」というリスクが伴います。また、遺言書に誤字・脱字があった場合は遺言書として有効ではないと判断とされる可能性がありますし、何より家庭裁判所による検認を受けなければなりません。

 

検認とは

検認とは「遺言書の存在」を裁判所が認める手続きであり、遺言書の内容まで保証してくれるものではありません。よく、「検認の手続を通して裁判所が遺言書の内容も保証してくれている」と思われがちですが、検認の目的は「遺言書の内容を明確にし、遺言書の偽造・変造を防止すること」にあるので、誤解しないことが大切です。

 

自筆証書遺言を選択した場合、遺言書に誤字・脱字があれば相続手続ができないこともあります。そのため弊社では公正証書遺言をお勧めしているのです。公正証書遺言は公証役場の公証人が作成するので誤字・脱字の心配もいりません。また、裁判所へ検認の手続を行う必要もないので公正証書遺言の謄本があればすぐに相続のお手続に入る事が出来ます。

 

また、遺言公正証書の作成には費用がかかることも事実です。遺産が多ければ多いほど手数料は加算されていきます。それでも、家族を守るためなら費用がかかっても良いということで、弊社にご相談にいらっしゃるお客様のほとんどが公正証書遺言を選ばれます。

 

今回弊社は自筆証書遺言をご提案

しかし、今回この様な状況で弊社がお母様にご提案したのは自筆証書遺言でした

 

自筆証書遺言を提案した理由

先ほど公正証書遺言の方が良いと説明していたのにも関わらず、なぜ自筆証書遺言を提案したのか、その理由は「時間」でした。

 

弊社はお電話で相談を受けてからすぐにお母様へ会いにいく日程調整を行いました。しかし、お母様の入院先の病院の都合(お母様の検査等)やコロナ禍の関係で、実際にお会いできたのはお母様の手術予定日の数日前だったのです。

 

公正証書遺言は公証役場の公証人が必要書類を確認した上で作成します。また、公証役場も準備や他の予約があるため、当時は最短でも2週間前後時間が必要でした。そのため、今できる最速かつ最善の方法として、弊社は自筆証書遺言を選択し、その作成のお手伝いをすることを選択したのです。

 

実際の遺言書作成において、弊社はお母様の意思を確認し、どのような文章を書けば良いかお伝えしました。コロナ禍で病院での面会時間も限られる中、その日は何とかお母様のお気持ちを直筆の遺言書として残す事ができたのです。その後、手術が成功して体調が回復されてから「あらためて公正証書遺言を作成する」ということをお約束し、私たちは病院を後にしました。

 

自筆証書遺言で守れたもの

それから少し経過し、娘様から一通のメールが届きました。

 

お母様が、術後、お亡くなりになったとのことでした

 

しかし、お母様が最後の力を振り絞って作成してくれた自筆証書遺言は、遺された娘様を救いました。もし遺言書がなかった場合、疎遠だった他の相続人の了承を得なければ相続手続を行うことはできなかったでしょう。しかし、遺言書が存在したことにより、「母娘で管理してきた不動産を娘に残してあげたい」というお母様の気持ちを守ることができたのです。

 

 

もし遺言書がなかった場合に想定されることとは

今回、ご依頼者であるお母様は、過去の相続経験を活かし、ご自身の入院が決まってからすぐに娘様へ「遺言の専門家へ相談するように」と促しました。なぜ、ここまでお母様は慌てたのでしょうか。それは恐らくお母様が今後の相続手続が大変になることをご存じだったためでしょう。

 

今回のケースでもし遺言書がなかった場合、相続手続はどうなっていたのでしょうか。

 

相続分を主張する相続人が出てくる可能性

相続手続きの流れとして、まずお母様の出生からお亡くなりになるまでの全ての戸籍を収集して法定相続人を確定させ、法定相続人全員でお母様の相続財産についてどのように分割していくか話し合わなくてはなりません

 

ここで、他のすべての相続人が「今までお母様と寄り添ってきた娘様が全部相続してかまわないよ」、と合意すればいいのですが、自分が相続できるお金は相続したいという方もいらっしゃいます

 

紛争になれば弁護士が介入することも

ここで相続人の意見が一致しなければ弁護士が介入するケースもあります。例え意見が一致したとしても、今度は遺産分割協議書に相続人全員の署名・捺印(実印)をしてもらい印鑑証明書を各相続人に準備してもらう必要があります。一切財産を相続しない相続人も、同様に署名・捺印や印鑑証明書の準備をしなくてはならないのです。

 

疎遠だった親族に対して、遺産分割について急に連絡する場合、予想もしていなかった様々なトラブルが生じる可能性は決してゼロではありません

 

自筆証書遺言にもとづいて進める相続手続き

自筆証書遺言にもとづいて相続手続を進める場合、遺言書の検認手続を裁判所で行うことから始まります。

 

今回の自筆証書遺言は専門家のサポートのもとで作成されました。公正書証で作成するに越したことはありませんが、弊社行政書士がサポートしたことにより、書き方ミスなど遺言書が無効になる要素は極めて低くなったはずです

 

(通常、金融機関によっては遺言書の書き方について厳しく判定される場合もありますので、できるだけ遺言書は公正証書で作成することを強くお勧め致します。)

 

今回のケースでは、遺言書の内容通り、お母様の全財産を娘様が相続するという内容で相続手続きを進めていきます。遺言書があるので、他の相続人とお母様の相続財産について分割協議する必要はなく、相続手続自体も遺言書がない場合に比べると比較的早く進めることができます

 

まとめ

今回のケースでは、自筆証書遺言を作成することにより、限られた時間内でお母様の意思を尊重することができました。実際には、公正証書遺言の方がメリット大きく、またご相談にご来所される多くのお客様が公正証書遺言を望まれますが、今回のように状況によっては自筆証書遺言の方が良い場合もあるのです。

 

もし、あのとき公正証書遺言にこだわって公証役場の予約待ちをしていたら、おそらく遺言書を作成すること自体叶わなかったでしょう。

 

もし、今、遺言書をどのように書けばいいのか悩んでいるのであれば、一度近くの専門家へ相談してみてください。専門家は数多くの遺言書作成に立ち会っていますので、的確なアドバイスをしてもらえるはずです。

 

弊社でも90分の無料相談を承っておりますので、札幌市近郊、東京23区近郊、名古屋市近郊の方はご活用頂ければ幸いです。

 

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